1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 | 泥濘(ぬかるみ)の日常は燃え尽きた。 魔術師による生存競争。 運命の車輪は回る。 最も弱きものよ、剣を鍛えよ。 その命が育んだ、己の価値を示すために。 目的のない旅。 海図を忘れた航海。 君の漂流の果てにあるのは、 迷った末の無残な餓死だ。 ……だが。 生に執着し、魚を口にし、 星の巡りを覚え、 名も知らぬ陸地を目指すのならば、あるいは。 誰しもは初めは未熟な航海者に過ぎない。 骨子のない思想では、聖杯には届かない。 生存の為の搾取。 繁栄の為の決断。 その行為は野蛮ではあるが―― 否定する事も、またできない。 ……死の淵でこそ、得るものもあるだろう。 死を悼め。 失ったものへの追悼は恥ずべきものではない。 死は不可避であり、 争いがそれを助長するのなら、 死を悼み、戦いを憎み。 死を認め、戦いを治めるがいい。 力を持つが故に道を踏み外す。 道を踏み外す為に逸脱した力を願う。 この矛盾もまた、人間の証である。 紛争のない世界、 調和に満ちた世界でさえ、特例は表れる。 なんのために。 避けようのない死、 逃げようのない終わり。 結末を前にしたとき、本質は表れる。 祈りも救いも不要。 戦いは今日、ここで終わる。 その狭間で――どうか、見せてほしい。 かつてそうであったように、 人間の全てが、 絶望の中で光を見いだせるのかを。 認めよう。 殺し合う事は避けられない。 肉親でさえ、隣人でさえ、競い合う相手なのだと。 それが人間の本質だ。 動物を絶命させ、資源を食い荒らし、消費するだけの命。 しかし、ならば―― 彼らの争いには、何の意味があったのか。 最も弱きものが、 最も強きものに挑む。 迷いと嘆き、 決断と成長に満ちたその道程こそ、 人間の証である。 聖杯は強きものにのみ与えられる。 最後の二人は、ともに性質の違う強者となった。 であれば―― もう一度君に贈ろう。 光あれと。 ――熾天の玉座にて君を待つ。 そして閉幕の鐘が鳴る。 その目覚めは、誰のものか。 |
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