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泥濘(ぬかるみ)の日常は燃え尽きた。
魔術師による生存競争。
運命の車輪は回る。
最も弱きものよ、剣を鍛えよ。
その命が育んだ、己の価値を示すために。

目的のない旅。
海図を忘れた航海。
君の漂流の果てにあるのは、
迷った末の無残な餓死だ。
……だが。
生に執着し、魚を口にし、
星の巡りを覚え、
名も知らぬ陸地を目指すのならば、あるいは。
誰しもは初めは未熟な航海者に過ぎない。
骨子のない思想では、聖杯には届かない。

生存の為の搾取。
繁栄の為の決断。
その行為は野蛮ではあるが――
否定する事も、またできない。
……死の淵でこそ、得るものもあるだろう。

死を悼め。
失ったものへの追悼は恥ずべきものではない。
死は不可避であり、
争いがそれを助長するのなら、
死を悼み、戦いを憎み。
死を認め、戦いを治めるがいい。

力を持つが故に道を踏み外す。
道を踏み外す為に逸脱した力を願う。
この矛盾もまた、人間の証である。
紛争のない世界、
調和に満ちた世界でさえ、特例は表れる。
なんのために。

避けようのない死、
逃げようのない終わり。
結末を前にしたとき、本質は表れる。
祈りも救いも不要。
戦いは今日、ここで終わる。
その狭間で――どうか、見せてほしい。
かつてそうであったように、
人間の全てが、
絶望の中で光を見いだせるのかを。

認めよう。
殺し合う事は避けられない。
肉親でさえ、隣人でさえ、競い合う相手なのだと。
それが人間の本質だ。
動物を絶命させ、資源を食い荒らし、消費するだけの命。
しかし、ならば――
彼らの争いには、何の意味があったのか。

最も弱きものが、
最も強きものに挑む。
迷いと嘆き、
決断と成長に満ちたその道程こそ、
人間の証である。
聖杯は強きものにのみ与えられる。
最後の二人は、ともに性質の違う強者となった。
であれば――
もう一度君に贈ろう。
光あれと。
――熾天の玉座にて君を待つ。

そして閉幕の鐘が鳴る。
その目覚めは、誰のものか。