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小說試閱

エンジントラブルに見舞われた遠征艇が予定日数を大幅に超え、帰還したのは昼になろうという時だった。

遠征艇の大型ハッチが開き、憔悴しきったメンバーが次々と降りてくる。彼らを目にした途端、忍田達は息を飲み、呆然となった。

構内に響き渡る泣き声の源に、誰もが言葉を失い、立ち尽くす。

疲労困憊に空気を澱ませた遠征部隊の中でただ一人、太刀川だけが普段通りのフラットな状態で、先程からわんわんと泣き声を上げている幼子を脇に抱え、立っていた。顔を真っ赤にして泣き叫ぶ子供の顔に、忍田は見覚えがあった。恐らく、この場にいる誰もがその可能性を思い当たっていたに違いない。

「一体これはどういうことだ」

城戸の、常に冷静で揺るがぬはずの声にも、僅かな驚愕が入り混じる。

太刀川の腕の中で泣き声を上げる幼子は、忍田のよく知る、 幼少時代の太刀川慶の姿をしていた。

事の発端は、エンジントラブルのため急きょ立ち寄った惑星で太刀川が現地人と交流を持った所にある。

遠征先では隠密行動を常としていた太刀川だが、そこが予定にはない惑星であったこと、降り立った場所も都市部ではなく、交流を持った近界民も純朴そうに見えたことから、つい手を出してしまった。

困っていた親子連れに太刀川が手を貸し、そのお礼だと言って子供が手ずから太刀川に渡してくれたキャンディがこの発端だ。

「願い事を一コ叶えてくれるキャンディなんだって。でも、 そんなん言われて信じるヤツいる? おまじないって言うか、 まあそういうキャッチコピーみたいなもんだと思うじゃん? まさかホントに何かあるなんて、忍田さんだって思わないだろ」

キャンディを口にして、その場では何事も起きなかったが、 一晩寝たら幼少時代の自分が同じベッドで眠っていたと言う。 無論、艇内はパニックになった。特に風間隊の菊地原が多大な迷惑を被った。泣いて喚く幼子は一向泣き止まず、帰還するまでの間、菊地原はずっと子供の泣き声に悩まされたのだ。

「見知らぬ土地の見知らぬ人間から貰ったものを、ホイホイ口にするんじゃない! とりあえず、メディカルルームで徹底的に調べて貰ってこい!」

本部長室を叩き出された太刀川は、鬼怒田らの待つ技術開発室に向かい、そこで上から下までじっくりと調べ上げられ、 何事も無いことが確認された。

ようやく開放された太刀川は、疲労で重くなった足取りのまま本部長室へと向かう。遠征では蓄積しないタイプの疲れが泥のように溜まっていた。これは忍田とのスキンシップで癒やして貰わなければ到底、回復できない。

先程、叩き出された本部長室に再び太刀川が乗り込むと、 そこには先客がいた。太刀川にとって天敵とも呼べる先客だった。

「太刀川隊に戻らなくていいのか?」

忍田がデスクからそう投げてくる。遠征から帰還した当日は防衛任務を外されるから、今日この後の太刀川はフリーだ。 だが太刀川はそれどころではない。投げかけてきた忍田の懐にすっぽり子供が入り込んでいたからだ。

忍田の首にコアラみたいにくっ付いて、周りなど一切見ずにこちらに背を向け、子供は忍田ばかりを見ている。

忍田に貼りつき、ころころ笑う子供は幼少時代の自分だった。くりくりと今より激しい癖っ毛をぴんぴん跳ねさせて、 子供は両手を振り回して忍田の注意を引くように彼の頬を撫でている。

「だめだよ、慶。いたずらしない」

「俺、いたずらなんてしてない」

「いや、お前に言ったんじゃなくて …………………こら、慶」

「そいつのこと『慶」って呼ぶの?」

「だって、慶だからな。――ふはっ、慶、くすぐったいよ」

そう言って頬を撫でてくるぷっくりとした小さな手を取ると、忍田は子供の額に額を押し付け、ぐりぐりと頭を左右に振った。額をくっ付けているから、子供の頭も一緒に左右に振れる。それが楽しいらしくて、胸の中からきゃあきゃあと笑う黄色い声が上がった。子供は真っ直ぐ忍田を見たままだ。 そうして忍田も子供を見ている。出来上がっている二人の世界に太刀川は機嫌の悪さを隠しもせず、ぶすうと頬を膨らませ、ズカズカ大きな歩みで忍田に詰め寄った。

「慶は俺で、俺はここにいるんですけどー!!!」

「この子を調べたところ、お前のトリオン反応が検知された。

この子はお前のトリオンだ」

「俺のトリオンの擬人化ってこと?」

「平たく言うとそうなるな。鬼怒田さん達の見立てでは、お

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太刀川が忍田の手の動きを追っていれば、目の前で、彼の無骨な指先が自らのアナルへと潜り込んだ。ここまでサービスされるとは思っておらず、太刀川は大きく目を見張る。

太刀川の視界の中で、差し入れられた忍田の指が彼の深い場所をまさぐっている。ぬるぬると前後に揺れる指の動きはいやらしくて、太刀川の興奮を掻き立てた。やがて、ほどかれてきた秘所にもう一指が潜り込む。二本の指をばらばらに動かして、忍田は時間を掛けて自らの奥を弛めている。

ナカを探る忍田の指が、ふとその動きを変えた。単純な前後運動だけでなく、ぐるりと掻き回すような動きが混ざる。 その所作に、太刀川は覚えがあった。彼がひときわ触っている場所にも。忍田は前立腺をいじっているのだ。そこから滲み出る快楽を引き当ててしまい、まさぐる指を止められない。 自慰のような忍田の行為を、太刀川は熱っぽい眼差しで注視した。艶めかしく腰を波打たせて、自分で良い所を探る忍田は、壮絶にいやらしかった。我知らず、ごくりと生唾を飲み込んだ。

忍田は、自分のはしたないその場所が太刀川に凝視されているのを感じていた。これから先の行為を知りながら、その為の準備を自分で施す。その一部始終を相手に見られている。

―――燃えるような羞恥が忍田を襲った。だが、その責めさえも今は性感に繋がってしまう。先走りが忍田の性器から溢

れ、シーツに糸を垂らして落ちた。

「あ、すげ」

完全に溶け切った自分の体を、忍田は太刀川へと差し出した。膝を付き、スウェットのまとわりついた足を不自由に広げ、腰を上げて、背後の太刀川を見る。 「・・・・・・挿れて、いいぞ」

太刀川の大きな掌が忍田の腰を掴んだ。その先で足を持ち上げ、いまだ引っかかったままのスウェットを下着ごと引きずり落とす。剥き出しになった忍田の下肢をもう一度膝つかせると、彼自らがほどいてくれた最奥へ遠慮なく挿入した。 「・・・・・・ぅあっ!」

入れられた瞬間、これまで耐えかねていた忍田の性器は呆気なく射精した。同時に、入り込んだ太刀川をきゅううと締め付けてしまう。

待ち焦がれていた快感に忍田は両手でシーツにしがみ付き、 顔を押しつけ、情欲にまみれた声をはしたなく漏らした。

「あっ、あっ、っ、あっ、」 「えっちだな、忍田さん。ナカ、じゅるじゅるじゃん」 「んぁつ、うんう・・・・・・っ」

「あー、しまるー」

欲のまま、忍田の奥を突き上げる。その度、忍田からは気持ちよさしか感じない、淫らな声が吐き出されてきた。