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 みずほ銀行が新たな勘定系システムの完成にめどをつけ、金融界で安堵の声が広がっている。総費用が最大4000億円台半ばに上る大プロジェクト。システム会社が優秀な人材を多数送り込み、エンジニアの奪い合いに拍車がかかっていたという。人繰りに余裕が生まれれば、金融界でシステム投資に弾みがつくかもしれない。

 みずほ銀が刷新するのは入出金や銀行口座の管理を担う勘定系システム。接続テストや移行への予行を経て、2018年度から段階的に切り替える予定だ。稼働が本格化すれば夜間や休日でも振り込みできるようになったり、ATMの稼働時間が延びたりするなど、利用客にとっての利点も少なくない。

 02年と11年にシステム障害という手痛い経験を重ねたみずほ。銀行の勘定系システムは複雑で規模も大きく、とくに開発の難易度が高いとされる。背水の陣で臨んだ今回の刷新では富士通や日立製作所、日本IBMなどが優秀なシステムエンジニア(SE)を数多く送り込んでいたという。

 かんぽ生命保険も1月に新しい基幹系システムの稼働を始めた。3200万件弱と膨大な契約を抱える同社が投じた費用は総額約1200億円。今回からメインフレームを切り替えた先の日本IBMからは1600人程がプロジェクトに参加したという。損害保険ジャパン日本興亜も来年に基幹系システムの開発を進める予定で、金融界ではシステムの刷新や開発が控えている。

 高度な情報システムが求められる金融業では、設備投資の約半分をIT(情報技術)分野が占めるとされる。日本情報システム・ユーザー協会の調べによると、売上高に対する金融業のIT予算は16年度の平均値で7.23%と2%程の全業種平均を大きく上回る。有為なSEが手薄な中、両社のプロジェクトで人材不足に拍車がかかっていたとの指摘もある。

 みずほとかんぽのプロジェクトが終わったからといって両社が優秀なSEを手放せるわけではない。ただ「(人手不足の緩和で)システム会社も前向きな提案がやりやすくなるだろう」(大手保険会社のシステム担当幹部)と期待をかける向きも少なくない。(渡辺淳)