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『指を絡め、お祈りを』


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 光が乏しく、底知れない彼の灰色がかかった瞳に、キラッ、キラッとまだ名付けられていない光が何度も瞬いた。

 その輝きは夜の空からこぼれ落ちた星のよう、手を伸ばしても掴めないほど遠い、とヨウはいつも自分に言い聞かせていた。

ーーリンドウはヨウを求めて、右手を宙に浮かせた。

 だがいつの間にか、その輝きは戯れに来た蝶のように近付いてきた。

ーーそしてヨウはリンドウが何をしたいのか分かってくれたよう、彼女の手を取り、互いの指を絡ませ合い、ぐっと握った。

 ヨウが持ち得ないものがあるというなら、いつか彼がそれを得られるように手助けをしたいとリンドウが希う。

 それは果たして、祈りか、あるいは執着か。リンドウ自分でも判断はつかなかったが、そのどちらであっても、彼女にとってさして変わりはなかった。

ーー手のひらから伝わってきた彼の温もりを感じながら、欲しいものがすぐ手の届くところにあると語っているよう、ワインレッドの瞳に温かな親愛を籠もっていた。

 ただ薄闇が散る前に、夜空で見守る星となり、身近に鱗粉を撒き散らす蝶となり、光を忘れた黒を微かにでも照らし続けられるさえすれば、それが良かった。



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