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**京アニ火災、死者33人に 身柄確保された男は意識不明**
 18日午前10時35分ごろ、京都市伏見区桃山町因幡のアニメ制作会社「京都アニメーション」の第1スタジオから出火し、鉄筋コンクリート造り3階建ての建物延べ約700平方メートルの大半が焼けた。京都府警によると、33人(男性12人、女性20人、不明1人)の死亡が確認された。このほか36人が病院に運ばれ、うち17人は入院中で意識不明の人もいる。残りの大半の人は軽症という。

 京都府警は、ガソリンのような液体をまいて火をつけたとみられる関東在住の男(41)の身柄を確保した。殺人と現住建造物等放火の疑いで捜査している。男は上半身などをやけどして病院に運ばれ、意識不明の重体。搬送される際、駆けつけた警察官に「1階で液体をまいて火をつけた」と話したという。

 捜査1課によると、出火当時、建物内には従業員67人と社外の6人の計73人がいたとみられる。遺体が見つかったのは、1階で2人、2階で11人、2階と3階をつなぐ階段で1人、3階から屋上に上がる階段で19人という。上階に炎と煙が広がり、多くの人が屋上に逃げようとして死亡したとみられる。

 確保された男と似た人物がこの日、容量20リットルの携行缶二つを持って近くのガソリンスタンドを訪れ、ガソリンを買っていたという。現場近くに携行缶二つと台車のほか、包丁数本とハンマーが入った手提げかばんとリュックサックが残されていた。

 複数のスタジオ関係者は、男が「死ね」と叫びながらビルに入り、1階の入り口付近でバケツに入ったガソリンとみられる液体をまいた後、すぐに火を放ったのを目撃。府警は、購入したガソリンを台車で運び、現場近くで携行缶からバケツに移し替えてまいたとみている。

 男は放火後、南へ約100メートル離れた京阪電鉄宇治線の六地蔵駅付近まで逃走。路上で倒れていたところをスタジオの男性従業員が取り押さえ、警察官に引き渡した。この際、男は「パクりやがって」「火をつけた」などと話したという。

 捜査1課によると、京都アニメーションから昨年、インターネット上で同社に対する脅迫行為があると相談を受け、捜査を進めていた。府警は書き込んだ人物の特定を進める。

 同社は「京アニ」の愛称で知られ、「けいおん!」「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」「響け!ユーフォニアム」などの作品を制作した。

 火災は約4時間40分後に鎮圧されたが、火がくすぶっている可能性があり、午後11時の時点で鎮火にはいたっていない。現場には、消防車や救急車など約65台が出動した。

**八田社長明かす、数年前から届く殺害予告メール**
 京都アニメーションの八田英明社長は18日夜、京都府宇治市の本社前で報道陣の取材に応じた。今回の火災との関連は不明だが、数年前から危害を加えることや殺害予告を思わせる内容のメールなどが届くことがあったと明かした。

 八田社長は「映像に対してちょっとした意見を頂くことがあった。批判とかこのストーリーはおかしいとか」と説明。弁護士を通じて対応したり、警察に相談したりしてきたが、実際に危害を加えられたことは無かったという。

 今回の火災は、多数の死傷者が出る大惨事となった。「家族の皆さんには逐次連絡している。真面目に仕事をしている団体でこんな事件が起きるのは、法治国家としておかしい」と憤った。

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 〈京都アニメーション〉 京都府宇治市に本社を置く1981年創業のアニメ制作会社。下請けから出発して業界準大手に成長し、グッズショップや出版も手がける。「けいおん!」「Free!」「響け!ユーフォニアム」などの人気シリーズを生み、多くの作品が映画化。モデルになったとされる場所などをファンがめぐる「聖地巡礼」の現象も起きた。

 東京に制作会社が集中する業界で「京都からの発信」にこだわり、京都が舞台の作品も目立つ。描き込みの多い丁寧な作画が持ち味で、「京アニクオリティー」という言葉が生まれるほど国内外にファンが多い。