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3623 【承前,百卌五卌六。長門浦仰月作歌。】
 山乃波爾 月可多夫氣婆 伊射里須流 安麻能等毛之備 於伎爾奈都佐布
 山端(やまのは)に 月傾(つきかたぶ)けば 漁(いざり)する 海人燈火(あまのともしび) 沖(おき)に滯(なづさ)ふ
 望見山端間 明月西傾將沒時 夜間為漁獵 海人燈火滯沖瀛 隨波蕩漾今可見
遣新羅使 3623

3624 【承前,百卌五卌七。長門浦仰月作歌。】
 和禮乃未夜 欲布禰波許具登 於毛敝禮婆 於伎敝能可多爾 可治能於等須奈里
 我(われ)のみや 夜船(よふね)は漕(こ)ぐと 思(おも)へれば 沖邊方(おきへのかた)に 楫音(かぢのおと)す也(なり)
 吾度唯已身 孤獨榜漕此夜船 形單影孤者 誰知在彼瀛邊處 楫音梶聲今可聞
遣新羅使 3624

3625 古挽歌一首 并短歌。【承前,百卌五卌八。古挽歌。】
 由布左禮婆 安之敝爾佐和伎 安氣久禮婆 於伎爾奈都佐布 可母須良母 都麻等多具比弖 和我尾爾波 之毛奈布里曾等 之路多倍乃 波禰左之可倍弖 宇知波良比 左宿等布毛能乎 由久美都能 可敝良奴其等久 布久可是能 美延奴我其登久 安刀毛奈吉 與能比登爾之弖 和可禮爾之 伊毛我伎世弖思 奈禮其呂母 蘇弖加多思吉弖 比登里可母禰牟
 夕去(ゆふさ)れば 葦邊(あしへ)に騷(さわ)き 明來(あけく)れば 沖(おき)に漂(なづさ)ふ 鴨(かも)すらも 妻(つま)と伴(たぐ)ひて 我(わ)が尾(を)には 霜莫降(しもなふ)りそと 白栲(しろたへ)の 羽差交(はねさしか)へて 打拂(うちはら)ひ 小寢(さぬ)とふ物(もの)を 行水(ゆくみづ)の 歸(かへ)らぬ如(ごと)く 吹風(ふくかぜ)の 見(み)えぬが如(ごと)く 跡(あと)も無(な)き 世人(よのひと)にして 別(わか)れにし 妹(いも)が著(き)せてし 慣衣(なれごろも) 袖片敷(そでかたし)きて 獨(ひとり)かも寢(ね)む
 每逢夕暮時 騷動啼鳴在葦邊 每逢朝明時 縱令此味鴨 得以與妻常相伴 似訴霜莫降 零我夫妻尾羽而 白妙敷栲兮 羽翼相交拂雪去 出雙且入對 纏綿小寢不相離 然顧吾命者 恰猶逝水去不返 可憐我身者 正如吹風不可見 既為石火光 即逝無痕此世人 今取相別去 親愛吾妻之所著 慣衣褻裳者 以彼衣手袖片敷 孤單寂寞獨寢矣
丹比大夫 3625